波線
霜天

おーい
と呼ぶ声に
波線を見ています
空の上
海の下
その間の曖昧な辺りで


いつだったか春の衣装だった頃
それでは暑すぎると文句を言った頃
山沿いの海沿いのラジオも響かない場所
腕時計は不要だったらしいので
かちかちと適当に響かせることにします
そこも確かに毎日だけど
そこは僕等の毎日ではなかった

おーい
と呼んでみても
波線を見ています
波の下
風の上
隙間へ少しずつ
刺さった何かを捨てながら


岬の灯台は
真っ白で
空に浮いていました
入道雲、季節外れの
登るうちに
どこを向いている、か
わからなくなり
とりあえず空が見たく
深呼吸で風を
吸い込みたく
なり
天辺から
波の音か風の音か
区別がつかなくなるまで


おーい
と呼ぶこともなく
波線を見ています
日常と
日常と
間に
忘れたもの


自由詩 波線 Copyright 霜天 2004-08-03 02:01:49
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