岸と岸
木立 悟






道と緑 弦の脚
紙より重い ひとつの羽根
前へ 前へ 
鳴りつづく


雨とはざま
空に触れない
遅いはばたき
銀の冬の糧


水は見えず ただ聞こえる
花のむこう
崖と左目
紙に沈む魚 沈む鳥


まなざしは去り
六月にとどまる
岩を巡る火
川底の声


雨は遅れ
次の雨に添う
紙を包む手のひら
ぬれる手のひら


傷と溝の姿の軌跡が
もうひとつの道となり
道の上に延び
道の上に鳴る


背を追う背
川に映る
何もない地に
紙の音は降る

















自由詩 岸と岸 Copyright 木立 悟 2008-10-24 14:15:53
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