filament
ねことら





触れあうと 音もなく
はがれ落ちた 鱗は
ひとつひとつ 淡く発光して
僕たちは 喪失のただなかに
いびつな突起物を
あてがいつづける
いくつもの 鮮烈な傷跡を
つめたい指先で 埋葬しあう
水に潜るように
すきとおってゆく
もういちど



 みずのそこ
 発光する フィラメント
 もう両手で
 覆ってもいいよ



ターコイズブルーのくらやみ
そのほとりで したたっている
あてがわれた格子 乾いた金属のおと
残響だけを だきしめる



 こごえたからだを
 スチームであたためてやると
 仄白くもえているようで
 微細な銀河を秘匿する
 この数十キログラムの
 ふたしかな 二個のもの



とぎれた送電線の 奥底
あたためられた遺跡から
かぎりなく ゆるやかに
再生された
無色の ひかり
 (フィラメント



 その きえいるまえの
 またたきで
 遊ぶように
 泳ぎつかれながら
 僕たちは いきよう









自由詩 filament Copyright ねことら 2008-10-18 22:31:17
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