笑顔
千波 一也



雨よ降れ
ざんざん降れ
と、こいねがう村がある


たった
ひとつぶの雨だれにも
没してしまいそうな
舟がある



 めぐみや恐れや
 あれこれは

 ありえぬ声で
 あたりまえの日々に
 生み落とされる


 それを聞いたか、

 きみは
 聞いたか



笑顔はときに
ひとの痛みをやわらげる

そうして
ときにひとの痛みを
なお深くする



 わかりやすさの延長にある
 わかりがたさから
 絶えてはいけない
 響きがあふれる



向こう側、と指をさす
その自分にとって近しい距離を
遠くでだれかが
きっと見ている


それは
どこまで笑顔だろうか




自由詩 笑顔 Copyright 千波 一也 2008-10-14 18:40:55
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