名付けられない雨のにおい (詩)
クリ


においには
名前がないから
きみに伝えることは難しいねぇ
切なさにも
名前がないから
言葉にすることは大変だねぇ

すごく大切なものを忘れてしまって
忘れてしまった悲しさだけが残っているとき
どうにかして思い出そうとすると
もっと悲しくなるだけでしょう?

しばらくカラカラのお天気が続いたあと
アスファルトに少しだけ雨が降ると
名前のない君に
会いたい気持ちと
よく似たにおいがするよ

思い出せない
悲しい大切なものを思い出そうとしても
もっと悲しいだけだけれど
道の向こうで
僕と同じように傘もささないで
雨のにおいを嗅いでいるらしい人を見つけたら
ちょっとだけ
手を振ってしまうんだよ



                Kuri, Kipple : 2004.08.01


未詩・独白 名付けられない雨のにおい (詩) Copyright クリ 2004-08-01 02:59:45
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