稲穂
こしごえ


遠い空の胸のうちには
一本の糸杉が、しん と立っている。
青く晴れた(夜ふけの雨後の)
明けすぎた真ひるの素顔。
さやかに風光りほほえみ
零しながら宙のゆびさす。
糸杉は、無風にないでさえぎるもののない
天をつらぬこうと根をはり深めていくますます。
胸は、一瞬きりりっ、とふるえた、(遠い空、
で。真っ青な神経を伝わる煉獄の焼失

       (無とはいえぬ。
暗黒物質よりも
真っ暗い深海だった重さを
照らす時のそう
遠くない宇宙的無表情

暗暗としてぬれる遺香の灰にそまる種の果実は、
映らないいおの鎖骨だ 決して
(、、、、、、、
私は、 ではないしかし光の影である
。断じてみたされることの無い重さ暗
く澄んだむこうがわへはついに到達し
えなかった速さ。ゆっくりと確実に消
えていく未来過去のあしばやにあゆみ
去る墓守のうたごえ、
、、、、、、、)
あきらめぬ異界のしろいてのひらにけがし
ひきよせ られつづける 暗夜な発光体なのであります

いくたびもしらむ素顔の。
星星のせせらぎが閃影する縁側まで
遠ざかる轟きの洗礼をいつくしむ
礼の角度の重さに反射する
予感に雨空は音もなく冴えかえりつづける
気づき(私のいなくなってしまっても、不意と
なにものもしずむことの出来ない水平線にまるくかしげる根
光でもたどりつけないほどの遠い孤独を鳴くアオガエルの
私の気配におどろき青ざめ斜陽をしつつ泳ぎ出す
(夢幻な)無限軌道が跳ねかえりことごとくひっそりと発火する
透明にくずれ上がってゆく燃焼する微笑の
ひかり!鎖骨の曲線へ そっ(、とふれる白いゆびさき

、みちあふれひらかれていく門
ひろがりまばゆく。
巡礼(行列)の先頭で 糸杉はなきやむ
ながくつめたくみすぼらしい警笛のあとで。
農夫がひとり、群れをなす雲と、黙礼あいさつをかわしている
純粋に。




自由詩 稲穂 Copyright こしごえ 2008-10-06 09:41:44
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