キャンドルナイト
飛鳥 彰


「キャンドルナイト」



肩から力を抜くのが良いんだね。
見よう見ようとすると、
見えなくなるものがある。


深呼吸を五、六回して、
目を閉じて、
静かに瞼の奥を眺めていると、
見えてくるものがある。


自分にとって大事なものの映像が飛んでくる。
海に朝日が昇るところや、
海に夕陽が沈むところをイメージしてみよう。
雄大な気持ちになってみよう。


ジェット気流に乗って空を、
白鳥たちが飛んでいるところを
イメージしてみよう。


黄金色に色づいた銀杏の並木道を
胸を膨らませながらワクワクして
歩いているところをイメージしてみよう。


すがすがしい空気の中で
息苦しさから解放された
自分の美しい姿をイメージしてみよう。


見知らぬ天使の羽根に
やさしく温かく包まれている
自分をイメージしてみよう。


銀河の果てから星降るように
金の流星群が自分にやさしく
降り注いでいるところをイメージしてみよう。


そっと目を開けたとき、
世界が雨上がりの空のように、
虹の橋を架けているかも知れない、
そんな美しい予感に少し震えてみよう。


収穫祭の歌が優しく流れ
果実酒やジャムやジュースが
倉の中でゆたかな香りを放っている、
そんな芳醇な時間を感じてみよう。


グラスに注ぐのは永遠の美しいしずくの酒
カップに満たすの琥珀色に輝く銀河の涙
白いノートに溢れるのは愛しい人への愛の言葉
キャンドルナイトの窓を照らすのは
さんざめく星と月の影


今宵は何もなくて
しかもすべてに満たされた不思議な夜。
祝祭と祝福にいろどられた
空間をしずかに飲み干して
時間が翼をひろげて舞い降りるのを目撃しよう。




自由詩 キャンドルナイト Copyright 飛鳥 彰 2008-09-29 22:08:26
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