私は石である。
佐々宝砂

腰のものを赤く染めて鳥が鳴く。
うぶめ、と呼ばれる鳥である。
産の穢れに死んだ女は鳥となる。
ほう、と鳴くが聞こえるか。

生まぬとしても女は女と男は言う。
うぶめの悲しみを知らぬは幸福と男は言う。
私は吐き気を覚えるがそれはもちろん悪阻でない。

  河原で石を拾った日があった。
  頁岩、石英、葡萄石、安山岩、かんらん石・・・
  私たちは石の美しさに感嘆した。
  石は何者も生まない、
  何の役にも立ちはしない、
  しかしとても美しかったのだ。

私を人の名で呼ぶな。
私は女王でない娼婦でない少女でない家政婦でない、
風によって転がるとしても、
人の手によって動くものでない。

しかし私は風にも転がる。
雨に打たれれば簡単に摩耗する。
宝ではないから価もつかない。

私は石である。
ただ一度限りの生誕しか知らぬ、
ただ一度限りの私である。

河原でうぶめが鳴く、
私は優しく歌いかける、
ここにおいで、石になろう、
おまえが血まみれだとしても私はおまえを抱く、

石となれ、石となって、
静かに河原に佇んでいよう、
きらめく雲母を身体に飾ろう。


自由詩 私は石である。 Copyright 佐々宝砂 2003-09-14 16:26:51縦
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