さようなら
虹村 凌


趣旨がよくわからない格好をしたあなたは
私の家の前を通り過ぎてしまって
罰が悪そうなのと恨めしいのがまざったような顔で
ちょっと笑いながらこっちを見てたのを覚えてる

慣れてないのがバレバレなのに
ちょっと強がってみせて
足を机の上に乗せたりしてる
汚いなぁって言うと
とたんに足を下ろしてしまったりして

あなたが私じゃない人の事を好きなのは知ってる
だからちょっと誘ってみたくなっただけ
別にあなたが好きとかそういうのは全然なくて
二人でソファに座って映画を見ていると言うのに
何のアクションも起こそうとしないあなたに苛っとして
ちょっと誘ってみただけ
そしたらあなたはあの人を呼んだりして
どういうつもりかしら
でもちょっと楽しそうだと思ったのも事実だから

一人の女の子もさばけないのに
二人の女の子をどうさばくのかと思ってたら
二人の女の子にさばかれたいような人で
面白かった
あの子が並んだ私達を見て
夫婦みたいだ、何て言ったら喜んじゃって
何だか凄く覚めた感じ

でもキスをしながら謝ったり
お風呂場につれて行こうと思ったのはどうしてだろう
よくわからない
でも手をつないで眠った事だけは鮮明に覚えている
幸せだった感じがする
あの夜を覚えてるのは私だけかしら


アンタの目はギラギラしてて
アドレナリンの匂いが部屋には充満してて
何だか病的な感じがしてた

下手をすると殺されそうなので
無難な答えを選んで返した
アンタはいとも簡単に納得して
ぎゅっと抱きついてきた
アンタなんか死ねばいいのに
相変わらず使えないんだ
はやく夜があけて朝がくればいいと思ってた


もうどうしていいかわからなくなって
知らない誰かに相談しようと思って選んだのがアンタだった
何でかなんてワタシにもわからない
ただアンタなら聞いてくれるって思っただけ
そうしたら思った通り聞いてくれて
何でか知らないけど涙まで流してくれて
気持ち悪いと思ったけど
きっと優しいんだって思った
一瞬
この人ならいいと思ったけど
今更素直に言えないから
ちょっとだけ匂わせて上から目線で言ったら
失礼だとかって怒ってた
それならいいいや

挙句の果てに今年は恋するとか言っちゃって
何かもうどうでもいい事になってきてる
電話した事を後悔し始めて
やめた煙草に手を伸ばす始末
最低
本当に使えないんだアンタってひとは
この夜がワタシにとって重要だって事を全然わかってない


さようなら
愛してたなんて卑怯な事は言わせないからね


自由詩 さようなら Copyright 虹村 凌 2008-09-29 17:11:20
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