創書日和「夜」
虹村 凌

ビーカインドリワインド
テレビデオが真っ青な画面を晒している
擦り切れる素振りも見せないテープは
今日で丁度3回目の再生を終えたところで
ずっと止まったままになっている

今この瞬間にあんたが何をしているかなんて
いま喰ってるハナクソほどの価値も無いくらいどうでもいい事だけど
あん時のあんたが何してたかってのは
一生知りえないけど
知りたいと思う事がたまにある
別にどうだっていいと思う事の方が多い

寝ようとしていた時に電話をかけてきて
泣き声で相談してきたんだ
今にも酷くひび割れて行きそうな関係を聴きながら
全く関係の無い筈なのに涙まで流して
一度切れた電話を手に
その結末を3時間も待って
それ以降4ヶ月も放置されて
別にその気持ちを考えろとも言わないし
非常識だなんだとお得意の台詞をそっくりそのまま返す気もない
ただ気になるだけで
どうだっていいとも思う

どうだっていい
あんたとの関係もどうだっていいよ

別にあんたにふられたからじゃないけど
AV女優に恋しようと思ったりしてる
だって綺麗で優しくていやらしくて
安心して眠れそうな気がするんだ
お母さんが言うんだ
もう一度育てなおしたいと
小さかった頃の事を思い出しては切なくなると
もう一度遊んだり喋ったりしたいと
お母さん
もう一度妊娠するのですか?
もう誰にも妊娠されたくない
AV女優にだって妊娠されたくない
あんたになんか妊娠されたくない
ただ丸くなって眠りたいだけなのだ

千の夜なんて三年かからないで超えられる
千と五百日くらい前にあんたを知ってから
よくわからない夢を見ている

何かあったらまた会いましょう
何もなければもう会わないでしょう


自由詩 創書日和「夜」 Copyright 虹村 凌 2008-09-29 16:41:41
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