流体
kauzak

暗闇の中 せせらぎの音だけが響いている
ぼんやりと見える水しぶき
岩陰には何も潜めないようで

だがそれは思い違いにすぎなくて
水しぶきのように見える放物線

微細な魚たちの鱗の鈍い光がこの闇を満たす

闇が晴れてくる 鈍い光に浸食される


私の汗を一晩たっぷりと吸った布団での目覚め
自分の体臭は馴染みすぎて感じられない

流れ去った体液を補充するために
だるい体を引きずるように冷蔵庫に運び
作り置きの麦茶を流し込む 味がしない

零れ続けているのは体液ばかりではないと
啓示のように胸の奥に空白がひろがる
拠り所を見失って久しいのだ

何もないまっさらな領域には種さえなくて
何かが立ち上がる気配すらなくて

何でもいいから流れ込んできて欲しいと願う


ベットに潜り込んで君を抱いてみる

君は嬉しそうな顔をするけれど
僕は優しさからそんな行動をした訳じゃない

胸の奥に空白を抱え込んで拠り所を零し続ける
僕はすべてに確信がなく動かない感情のまま
君が過去に喜んだ行動を取ることしかできない

   (2004.1.15)


自由詩 流体 Copyright kauzak 2008-09-27 22:25:48
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