君へ
大木円盤

それは
湯に浮く垢のようにも見える

やさしく両手で包みこみ
素早くすくい上げれば
強烈な表面張力によって拡散し
くみ上げる事ができない

押す難しさ
引く難しさ

複雑に仕込まれた間合いを
共時的に図らなければ
決して生まれることの無い
永遠の均衡が
そこに有る

そのアンバランスな均衡を
一旦踏み外したのならば
君は思わぬ真実の目撃者となり
後戻りできぬ現実に
驚愕する

そこには言い訳のきかぬ世界が
広がっている

無意識に拡大する自己相似性に支配された
禁断の世界が君を呑み込んでゆく

自我領域の崩壊を感じながら
その世界を見つめることしかできぬ
哀れな君はやがて
眼下に展開する
再分散化された幾つもの現実の中で
消滅する


自由詩 君へ Copyright 大木円盤 2008-09-26 20:56:53
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