秋の夏の雨
たちばなまこと

夏の雨が帰ってきた日
電車の行き交う河川敷で
嵐が運んできた枝で
薪には困らないなあ…って
ぼんやり過ぎ行く時間に蓋をして
現状のあまりのかなしさに
涙の雨も降らなかった日
写真にはやぎにしがみつくるいと
るいをおさえて無理にカメラ目線の私と
そして彼の
すがた

雨はいつもやさしくて
元気だった? っていつも
瞳にきらきら星を瞬かせている

雨の手紙
お祭りのにおいをはこぶ
今年もやぎがやってきたよ って
やわらかい指で描かれた絵

シルクの風がブラウスをすり抜けてゆく
夕暮れの駐輪場で
雨の手紙 燃える空に捧げた
灯るほのおには彼の詩が
あぶり出されては沈まって
たくさんの通り過ぎていった雨…って
くるおしいみぞおちに沁みる
秋に
夏の雨

雨の黒髪
雨のスカート
コットンのドレープって素朴に落ちるから
好きよ
雨の詩
雨の詩集
おりてくるしずくにはどれにも
名なえがあるように
特別であってないようで
すてきなんだよ

雨がくれた絵本
真っ赤な夕暮れの
シルエットに溶けて眠るぞうの子
おかあさんになれてしあわせ って
思わせてくれる詩が
あぶり出せばきっと浮かんでくるのだろう



自由詩 秋の夏の雨 Copyright たちばなまこと 2008-09-26 13:38:23
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