夜を駆ける
衿野果歩

駆け出したスニーカー
追うヒールの音が響く
誰にも内緒のまま
鬼ごっこをしていたんだ

肥大する想いは
そんなカゴじゃ囲えやしない
大事に育てた日々
かくれんぼはもう充分

 君の背中抱きすくめる

夜を駆ける
車のテールライト
闇に刻む
赤い軌跡
煙草くわえ
灯した小さな火が
始まりの
狼煙あげる


駆け出したスニーカー
追うヒールの音が響く
誰にも内緒のままの
秘密の恋だったのに


 僕の背中爪を立てる

夜を駆ける
車のテールライト
闇に刻む
赤い軌跡

揺れる 揺らぐ 走る 馳せる
夜を濡らす 闇を満たす
欠ける 陰る 変わる 香る
闇を暴く 夜を渡る

僕らふたり
焦がした導火線に
始まりの
キスをあげる


自由詩 夜を駆ける Copyright 衿野果歩 2008-09-22 14:07:46
notebook Home 戻る