少年Aの話
緋月 衣瑠香

少年Aは今日も何気なく日常を過ごす

背が高い
その高さがよく目立つ
少年曰く、遺伝らしい
家族で外に出歩けないとよく言っている
彼ひとりでも道行く人々が二回ほど彼をちら見するらしい

彼女は、背が低い方がいい
自称ロリコンな彼はつぶやく
将来の夢は、教師
「生徒、襲わないでよね?」
にやりと笑ってもちろん、とつぶやく
末恐ろしい彼である

少年は音楽を好む
何もないときはネットで音漁り
なかなか濃い趣味の少年の好きなジャンルは、ロック・パンク・メロコア
いいものを発見すると、これはいいの一点張り

そんな少年は繊細な心の持ち主
まわりの顔色をよく見て行動している
誰かを傷付けそうになったらすかさず自身を身代わりにする
どんなに傷がついたって、その人の前では大丈夫のひとことを貫く
そのくせ裏では、痛い痛いと誰にも気付かれないように悲鳴上げる

嘘つくのは特技だよ
ぽつりと言ったその言葉はあのときのまま空間を漂っている
「その言葉、嘘だよね?」
そんなことを言ったら、きっと少年は絶句するだろう
いとも簡単に想像できる

少年Aは今日も何気なく日常を過ごす
きっと明日も今日と一緒

きっとそこの少年も。












自由詩 少年Aの話 Copyright 緋月 衣瑠香 2008-09-21 21:23:10
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