懐かしくて
吉岡ペペロ
二十代が終わるときは
なにも響いてこなかったのに
きょう三十代が終わる
なぜか十代さいごのときが
懐かしくなっている
べつに追憶を重ねているわけではない
ただほんとうに
十代さいごのときが懐かしいのだ
雨の日の予備校までの道のり
じぶんだけの音
街
痛
書きかけの短歌
火薬が匂いで濡れていたのは
きょう三十代が終わる
なぜか十代さいごのときが
懐かしくなっている
十代さいごのとき僕には
世紀をこえるような感覚があった
べつに追憶を重ねているわけではない
ただほんとうに
十代さいごのときが懐かしいのだ