木葉 揺

岩のような物体がある
だけどそれは
確かな存在ではなく
既に灰の塊でしかない

ナイフの先から
たちまち感触が失われ
崩壊する固体
右手に力をこめ前進
わずかに灰をかぶるが
頭上から浴びることはなかった

白い大地に風が吹き
足元の灰の跡さえ奪ってゆく
右手が限界をむかえても
ナイフを放すことはできない

約束はなかった
足の裏に大理石を感じても
熱を奪う他に何があるのか

散らばった灰を足で分け
ゆっくり腰をおろして
太ももで足先を暖める
大地の模様を確かめた後
それをナイフでなぞった
なぞるしかなかった


自由詩Copyright 木葉 揺 2008-09-20 21:09:38
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