蛍石の望遠鏡
たりぽん(大理 奔)

異次元というもの
そこへの入り口があると信じて
目をこらせば手がかりが見える

透明で美しいレンズで分光されるまぶしい輪郭も
普通じゃない異常分散というレンズで結像する
ありのままを知るためにはありのままじゃダメなの
でも、虹のように変位するには透明で正常じゃないと
僕は美しいものが欲しいんじゃなくて
本当のものが欲しいから、あの望遠鏡が欲しい

フローライトの目が欲しい
暗闇でどんなに輝くものに灼かれても
輪郭だけは見つめ続けたいから

大人になって異次元に入り口もなければ
水晶ドクロがオーパーツじゃないってことがわかっても
目をこらせばどこかに出口があると信じて
僕は透明でへそ曲がりな目を持ち
三十センチ先の瞳をのぞき込みながら
物語を地上に降ろす
数千億光年向こうの星の死骸を
あなたへの指輪にするために


自由詩 蛍石の望遠鏡 Copyright たりぽん(大理 奔) 2008-09-19 00:34:38
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