初春に
あおば

        000105


初春に 捨身の街 冴え渡る

新宿で 振り袖姿 見つけてる

「調子はイマイチ」
GS125のプラグを点検する
別に異常はないようだ
パワーのイマイチなのは
どうしてだろう
死んだ親父が後ろに乗って居るなら
こんなものだろうけれど
居るわけないのだ
エアクリーナーも点検しようとしたら
振袖姿の娘を自慢しに
となりの親父がやってきて
シャッター押してくれとさ
断りも出来ぬから
愛想笑いしてカメラ構える
今のカメラは押すだけだ
残念ながら良く撮れているだろう

昔、振袖着たこともある娘がやってきて
変わらないわね、とぬかす
手前はちっとは変わったつもりでいるようだ
愛児を夾んだ記念写真を撮ってやる
いちたすいちはに!
ちっとも笑わん
無表情な写真一枚撮れた

もう少し居れば良いのに
次があるからとかいって
すぐ帰って行った
実家に帰ってしばしの間
娘に戻るのだ
亭主は昔を思いだし
一人ほくそ笑むのだろう
だから
GS125はまだ直らない




「みゅう」Vol.132掲載作






自由詩 初春に Copyright あおば 2008-09-18 14:04:47
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