怒りたい。
佐々宝砂

怒らないと次に進めないので、怒ることにする。特に特定のもんに怒ってるわけではない。今はじめて怒ったわけでもない。あまりにも怒らないで我慢してたので、なんかもう滅茶苦茶に怒りたいのだ。ちょっと前のことだけど、膿を少し出したら詩が書けるようになったので、もうこの際だから徹底的に出しておく。

ネット詩に飽きた。というより、ネット詩をめぐる状況に飽きた。あれもバカだこれもバカだ、うざったい、やりたきゃ勝手にやっとれと言いたい。おえらい人々の書いたものを持ち出して議論するのも疲れた、私は私で徒手空拳だ、それ以外の何者でもありゃしない。私は生身の私自身で詩に対峙してきた、なんにも頼らずに。勉強不足というなら、確かにその通りだが。

しかし誰にも専門や得意はある、私が得意なのはフツーの詩の詩評じゃない。それだけは確かだ。むしろ、専門がホラーとSFであったのにも関わらずフツーの現代詩を一生懸命熱心に批評し続けた私をほめてほしい。現代詩めいた詩の詩評をしている人々に問いたい、あなたは自分に全く無関係と思われる分野の批評を熱心にできますか?と。たとえば少女マンガの、あるいはゲームの、あるいは童話の。それもさ、それぞれの分野が持つ価値観にあわせて、ですよ? それぞれの分野には、それぞれの価値観がある。ホラー的価値観から見たら、詩の90%は無関係なシロモノで、9%はゴミだ。そして残る1%は私の眼には触れていないのだ。そんなことを私はおおっぴらに外で言えるか? 言えやしない。なんで言えないのか、自分自身の内面をのぞくとおそろしい。

私は分野と分野の越境を信じてきた、カテゴライズは常にそれを破るもののために存在すると信じてきた、専門分野を持つもの同士の交流こそはそれぞれの分野を発展させると信じてきた。私は歩み寄ろうと努力し続けた。でも疲れた。なんでこちら側ばかりが歩み寄らねばならないか。もう人にあわせるのは飽きた。サイトとサイトのはざまに立って右往左往するのにも飽きた。人からものを頼まれて書くのもいやになった。どうか、お願いだから、私に何も頼まないでくれ、私は私で好きにやりたい。私のやりたいことをやりたい。私の言うことが間違っていたら、それは私一人の責任だ。それが、何らかの文章を発表するものの正しいありかたではないか?

もちろん詩以外のことでいろいろもめるのにも疲れた。バカばっかりのさばる掲示板なんて閉じて正解だ。しかしやつらには怒りたい、どうしても一言がつんと言いたい。でも言わないのだ。黙っていなくちゃならなくなってきたのは、なんでだ。それに反比例するかのように、あれ書いてくれこれ書いてくれと言われるようになったのは、なんでだ。そんなにも献身的に自分の時間と気力を捧げるだけの価値が、ネットにはあるのか?

私はただ詩を書いていたい。

(2003年4月19日)


散文(批評随筆小説等) 怒りたい。 Copyright 佐々宝砂 2008-09-17 23:56:23
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