ゆりかご
氷水蒸流

緑は木々の透明をろ過する
歌おうと
目の穴を
鳥たちの影は細く伸びゆき
皿に盛り付けた朝を啄む

ありふれた爪痕で編まれ
内臓はひらかれ
時に浮かべられる
せせらぎとともに
薄い結石がぬくもる
光をくゆらし
肉をくゆらし

赤黒い銀河が散り落ちる
軋る鉄の牙の間で
沈黙の片足がひくついている
溶けた羊の鳴き声をたよりに
青い雲を追う狩人
狩人を追う青い雲

安寧はクジラのように空を潜る
分け隔てなく
飲み込み、流出してゆく
崩れかけた黒い山肌を
指紋のない銀のスプーンを
言葉のない赤子の瞳を



自由詩 ゆりかご Copyright 氷水蒸流 2008-09-13 08:23:10
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