ハンデ
星月冬灯


 目の見える私と

 目の見えない君


 目の見える私は虚構を見つめ

 錯覚の彼方に居る


 目の見えない君は心で闇を切り払い

 真実(まこと)を見抜く力が有る


 耳が聞こえる私と

 耳が聞こえない君


 耳が聞こえる私は虚栄に傾き

 世迷言を信じる輪の内に居る


 耳が聞こえない君は研ぎ澄まされた感覚で

 感性を極める力が有る


 口でもの言える私と

 口でもの言えぬ君


 口でもの言える私は虚言の極致に立ち

 慢心を起こし幻影(まぼろし)の中に居る


 口でもの言えぬ君は冴え渡る慈愛の理(ことわり)で

 玲瓏なる世界を作り出す力が有る


 見えるのに実は何も見えていない私

 見えないのに真(まこと)を識見している君


 聞こえるのに実は何も聴こうとしていない私

 聞こえないのに真の真偽の耳を持っている君


 話ができるのに実は何を言っていいか解らない私

 話ができないのに真の至言を持っている君


 愚かな私は五体満足なだけが

 取り柄で他には何も無い


 君は欠陥を余儀無くされた代わりに

 心眼を得た


 私は決して君には成りたく

 ないけれども

 それでも羨ましいよ

 その「真実を見抜く力」が



   玲瓏〜美しく澄み渡っている。

   識見〜物事を正しく見る力。

   至言〜いかにも事実・真理にかなっていると思われる言葉。



自由詩 ハンデ Copyright 星月冬灯 2008-09-08 06:58:36
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