真昼の釣行
北村 守通

昨日の誓いは
はや破られて
気がつきゃ
お天道様
はるかに彼方

朝のラッシュは
既に終わって
お魚さんは
今いずこ

ホテイアオイの紫色が
風に吹かれて滑り去り
むき出しになったエビモの中から
魅惑の尻尾がのぞいてる

  なんてぇ
  色っぺぇ尻尾なんだ
  どんな顔した
  べっぴんさんだ

きりっとしまったスタイルに
なんたることか
一目惚れ

  ゆらゆら揺れる尻尾
  くらくら揺れる意識

何しにきたか
釣りしにきたはず
その前に
一服
気を落ち着かせ
つけた火種は
フィルターに
見られちゃいないか
全方位確認

ゆらゆら揺れる尻尾が回転して
金色の魚体が 
ぎらり輝く

  なんてぇ
  色っぺぇ肌なんだ
  どんな瞳した
  べっぴんさんだ
  お前と
  俺とは
  つながるはずだ
  
結ばれるはずの釣り糸が
うねうね
うねって逃げ回り
届かず
つかめず
このやろう

色とりどりの
プレゼント
膨らむ妄想
止まらない
震える指先
止まらない
震えるルアーが
カタカタ笑う
黙れ
黙れや
こんちくしょう

よもぎも
カサカサ笑ってる
ショウリョウバッタが
飛び跳ねる
イトトンボ
釣り糸にぶら下がり
いらぬちょっかい
どっか行け

身だしなみ整え
息整えて
気を整えて
カウントダウン
狙ったポイント
一直線



    とてつもない速さで
    一直線
         に
            消え去った
                 魅惑の尻尾
                 せめて顔くらい見たかった


ホテイアオイの紫色が
風に吹かれて滑り来て
音なく
幕下げた
沼地のステェジ
カァテンコールは
ありません
  


自由詩 真昼の釣行 Copyright 北村 守通 2008-09-07 02:47:36
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