もう一度微笑をくれるよう
松本 卓也

「悩みなんて無いんだろうな」
笑えない戯言で寂しさを紛らわせるたび
誰から皮肉混じりに呟くの声が聞こえた

十年後の展望など描いていない
貯金どころか借金さえある
誰がために働いているかとか
何のために生きているかとか
自問する意味さえ欠片も無い

大切なモノ
捨て切れない願い
頼ってくる小さな命
穏やかな幸福
金に名誉
義務と責任

思い巡らしても
僕には何も無い

本当にそうだったのかすら
思い出せなくなりつつある君の笑顔が
時々瞼に映っては消えていく

生き続けてさえいれば
もう一度があるかもしれないとか
思っちゃったりしてさ

十年近く経とうとしている
君が好きだといってくれた僕は
今どれだけ残ってくれているだろう

幸せに暮らしてくれていると信じている
やり直したいことなど何もない
変わら無さ過ぎる日々を暮らしながら
今さら君の声を思い出そうだなんて願っても
もう聞こえなくなっていると言うのに

実際悩みなんて無い
ただもしももう一度会えたなら
かつての僕を救ってくれた
はにかんだ微笑を向けてくれるよう

僕もまた笑っていなければいけないんだ


自由詩 もう一度微笑をくれるよう Copyright 松本 卓也 2008-09-06 01:22:09
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