夕焼けヒッチハイク
あおば

             080903



明日も良い天気
保障する
空約束と信じていたが
少し軽率すぎたようでした
宗谷本線
抜海駅で降りて
歩きだしたときは、よく晴れていて
最終列車を撮影したときも
陽は水平に延びていたが
機関車の動輪もクランクも鮮やかに輝かし
これからの幸せも保障する
保障いたしますと
反射光が微笑んだ

そのあとがいけませんねぇ
何しろ本日の最終列車を撮影したのだから
どうやって戻るのか
戻り方も
考えておかねばなりません
行ったきりで戻れないのは
現実的ではありません
しかし、現実なのです
重たい機材を背に
2時間は歩かなくてはなりません
お天気はよいから
濡れることはありませんが
足にまめは出来るでしょうね
自己責任、自己責任と
宿に向かって歩きだす
海辺の道ははろばろとして
ながめているには気持ちいいが
足にとっては意欲をくじく
遠すぎる単調な距離

少し行くと
格好いい新型車が
向こうからやってくる
反対方向だから
無駄だと思ったが
反射的に手を挙げた
予想外に車は止まり
駆け寄って
宗谷の街まで乗せていって頂けないかと
虫の好い申込み
恰好好い青年は
くるりとUターン
クルマは矢のように宗谷に向かう
乗り心地の好いクルマですねぇと
愛想笑いを浮かべて御礼を述べる
ルル述べたいところだが
無口の青年
あまり話したくは無さそうで
クルマはすぐに宗谷の街に着いて
見覚えのある角で
通り一遍の御礼を述べて
降ろして貰う

彼は何処に行くつもりだったんだろうと考える
行くところがないから
なっとくのうえで戻ったのかも知れない
それともあれから再び出かけたのだろうか
無口の青年は恰好好いクルマに乗って
海岸沿いの道をひた走る
海風をスマートに受け流し
八月の
日暮れの日差しは明るいけれど
暑くはなかった




参考画像 宗谷本線 抜海付近 牽引機C55




初出「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿




自由詩 夕焼けヒッチハイク Copyright あおば 2008-09-05 21:28:40
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