秋の序章
銀猫


夏の余した最後の赤で
サルビアが燃える

風が湿気を掃い
柿の実がひっそりと
みどりの果実を隠していても
項を焦がす陽射しや
散水栓の向こうに出来る虹
そういう夏の名残りに守られて
燃え、
尽きる


  苦瓜の、
  花弁の黄色を黒アゲハが探している
  まだ終わりを信じない。
  汗ばむ額や
  熱くなったサドルの。


皴枯れた立ち葵の、
未成熟な種子を抱えたまま
褐色になった向日葵の、
知る
夏の骸


九月は
否応無しに、
わたしの欠けらを
蜻蛉に変え
最後の赤、のまま
日焼けが褪せてゆく








自由詩 秋の序章 Copyright 銀猫 2008-09-04 21:59:50
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