セピア
智鶴

美しい日々が消えて
遠ざかる視線が消えて
傷つく意味も消えて
美しい日々が消えて

君になど、分かってもらいたくないのです

今日もどこへ行くかも分らない日々を
何処に消えていくかも分らない人々が
常々通り過ぎて行きます
未だに混沌とした世界の中で
私は何を信じれば
生を拒まずにいられますか

何れ今日も何処かへ消えて
まだ染まらない明日がやってくるのです
冷たくなった紅茶の匂いと
切なく甘いレモンパイの香りが
何度も何度も思い出されては
僕を殺して消えていくのです

確かに此処に残した僕の寂寥は
ほんの一瞬の残像を映し出して

消えていく
僕を殺して


自由詩 セピア Copyright 智鶴 2008-09-04 21:30:14
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