夢の中からこんにちは
かいぶつ

お元気ですか?
過ごしやすい季節になってきましたね。
体の具合はいかがでしょうか。
僕はと言えば長年悩まされていた不眠症も改善に向かい
毎晩、ぐっすり眠れるようになりました。

僕は今、夢の中からこの手紙を書いています。
こちらの生活にもようやく慣れ始め
今ではオナラで空を自由に飛び回るほど
夢の世界で元気に暮らしています。
ただやはり僕は現実世界で生まれたからなのでしょうか
最近、こちらの世界でいくら楽しい思いをしようと
今ひとつ現実味がないことに、どこか物足りなさを感じるのです。

その話を友人の白くまに話したところ
(白くまと言ってもさすがは夢の世界です。
 人間と同じように言葉を話しますし
 やさしい心も持っているので心配はいりません。)
彼は僕に小声でこう言いました。
「いいかい、ここでその話は絶対にしちゃダメだよ。
 それがこの世界での掟なんだ。」

話によると夢の中の住人には
ここが夢の中であることに気付いていない人が大勢いるらしく
もしその人たちに急にここが夢の中だと気付かせてしまったら
大混乱を招く恐れがあるらしいのです。

いつも虹の上でギターを弾いている松村さんは
もうここに移り住んでから20年が経つと聞きました。
結婚し子どももふたりいるとのことです。
彼もここが夢であることに気付いていないひとりなのでしょうか?
それとも気付いていないふりをしているだけなのか。

彼は時折、物憂げな表情で
空をぼんやりと眺めていることがあります。
夢の世界にも不幸や悩みが
少なからずあるのだろうと思う
今日この頃です。

あともうひと眠りしたらそちらへ帰る予定です。
そろそろ僕もあなたの作った
みそ汁が恋しくなってきました。
朝ごはん、楽しみにしてますね。

それでは、また。


 追伸

 夢の郵便配達人はこの手紙を
 あなたの枕元まで届けてくれるのかが
 少し気がかりです。


自由詩 夢の中からこんにちは Copyright かいぶつ 2008-09-04 16:11:49
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