新しい町
doon


 丘に一本の木がある
 見向きもされず
 子供が木に登ることも無くなった木

 紅葉もしない木の回りはやがて
 町になっていく
 道が出来て町は活気に満ちた
 木は独りになった
 区画整理がまた始まり
 どんどん住みにくくなった木には
 虫たちも去っていった

 とうとう木を切ろうという話になった
 みんな賛成だった

 夏のある日
 木は切り倒された
 夏の暑い日であった
 倒れた拍子に
 木を取り囲んでいた町人全てに
 青臭い香りが舞った
 
 誰かが言った
 「子供の頃に嗅いだ香りだ」
 活気とともに
 町は幼い頃の懐かしさを失ってしまった 


自由詩 新しい町 Copyright doon 2008-09-01 18:19:27
notebook Home 戻る  過去 未来