僕は世界に旗を掲げる
たりぽん(大理 奔)

  かなしくてもしあわせでも
  かぜはいつかあめになってしまう

僕の知らないところでも
発電風車をすり抜け
ロウソク工場の煙をながし
ビルの隙間で口笛を響かせ
千切れた段ボールを蹴飛ばし
ずいぶんと遠いところまで
だけど
僕は知らない

   かなしくてもしあわせでも
   ひとはいつもあめになってしまう

いたずらに枯葉を飛ばし
ありったけの大使館の旗を吹き
峠のタルチョをはためかせ
瓦礫の街で口笛を響かせ
渡り鳥と山稜を越え
砂漠の砂を踊らせる
ずいぶんと遠く
だけど

僕は知らない

  風と感じないけど
  吹いているものがある
  雨ではないのに
  降りそそいだりこぼれ落ちる
  でも、そんなふうに
  濡らしはしない

無関心ではいられないのに
すり抜けていく言葉
かぜにはこびあげられて
雨になるには重すぎる
それが僕

  町を見下ろす放牧場で
  できるだけ高く
  世界に白い旗を掲げる
  何色でもない旗を

  風が吹いてゆく
  渡り鳥が帰って行く
  口笛を吹く
  草を飛ばす 
  できる限り
  とおく、遠く 
  だけど

だけれども




自由詩 僕は世界に旗を掲げる Copyright たりぽん(大理 奔) 2008-09-01 00:38:42
notebook Home 戻る  過去 未来