田吾作弁当
天野茂典

  

  だれもいない台所でぼくは
  ひとりおこわの田吾作弁当を
  食べた SOGO地下食料品売り場で
  買ってきてもらったものだ うまくも
  まずくもなかった 見栄えはいいが
  味がないのだ 都会の味でも
  田舎の味でも 世界の味でもない
  単なる平均値なのだ
  それはまるでいまの日本を代表する
  値札のようにおもわれた
  能面なのだ そのものに表情というものがない
  寂しかった 一人で食べたせいもあるが
  味気なかった 今の日本のコンビニや
  ス−パ−の食品でもおなじことがいえるのだろう
  均一化されることがいいことか どうか
  誰にもわかることだろう
  豊かな日本の食材がこうして無表情に
  なっている 平等なのではない
  管理化なのだ 味本来の個性が失われているのだ
  日本全国津々浦々田吾作弁当は都会でも
  田舎でもおなじ味しかしないのである
  ぼくたちは今日も田吾作弁当に黙って
  箸をつけるのだろうか
  なんとめでたい田吾作弁当なんだろう
  あんたわらっちゃだめなのさ!

  2004.7.25
  


自由詩 田吾作弁当 Copyright 天野茂典 2004-07-25 11:49:11
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