白い砂浜
ましろ

夜の湖の上を艶やかなカラスが舞っている

目が覚めると 
今年はじめて秋の空を見た
青く澄みわたる空の果てを探っていても
見えるはずもなく
疲れ果てて しくしくと泣いた

夏の終わりに続いた雨は夏を消した

午後になるにつれ 
心は空に呼応するように
グレーの雲で埋まっていった
入りきらない分は泪になって
ごわつくシーツにこぼれ落ちる

気だるく火照った指で額の汗を拭うと
夏の雲がもくもく ぴんく色に浮かんでいた
うろこ雲がひとすじ白く流れている

窓を開けると
夏と秋が混じり合いながら入り込み
立ち止まっていた空気を外へ押し出してしまった
肺が涼やかな重量感で満ちていく


白い砂浜がみえる

いつのまに付けていた
ちいさなピアスを外すと
手のひらで貝がキュキュっと鳴った
祈るように包むと
わたしは 夏と秋の狭間 青い空へ放った

両耳のとてもちいさな白いあとがruruと歌う

光りのなかで
わたしの熊さんが貝のピアスのお嬢さんと踊っている


自由詩 白い砂浜 Copyright ましろ 2008-08-29 13:12:36
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