溢れる
佐々木妖精

蓄えを崩した時
してはいけない枷がほころび
祝福に満ちるのを感じる
崩すものがなくなるまで
私の都合を優先したいものだが
さいわいただの願望だ
快晴を望みながら蛇口をひねる

へその緒がかつて身体の一部だったと
嘆いたことがあるか
お前なんかといもしない人に振り回された件を
血を流して解決したことがあるか
自分が世の中の一部であり
交わらずとも解け込んでいたと感じた日
すれ違う人もみな笑みを浮かべていた

どこからがもみあげかなど
どうでもいい話だ
抜け毛がどんな形をとろうと
毛髪の繁みが額を規定する
スキンヘッドと首の境目について
考えたことがあるか
毛むくじゃらの獣のように
赤ん坊には顔しかない

命と私の境目について
考えたことがあるか
互いが互いから抜け落ちる瞬間
誕生と死の類似点に気付き
はじめましてとさよならが言えない


自由詩 溢れる Copyright 佐々木妖精 2008-08-28 22:56:55
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