駆け込まれる
葉leaf


眠れない夜
眠りの水面で
寝返りを繰り返す
眠りを手で掬ってみるのだが
すぐに指の隙間から零れ落ちる
意を決してうつぶせになり
眠りの水面に顔を浸けてみるが
すぐにくるりと仰向けになってしまう
仕方がないので
僕はしばらく脳の中を歩き続ける
いつの間にか
眠りの中に沈み込んでゆき
僕は眠りの水底で
溺死する


隠れている人に挨拶をしよう
マンションの厚い壁の中に隠れている人に
こんにちは
彼は 壁は区切りの線ではなく
それ自体ひとつの部屋であることを
終始悲しんだ声で教えてくれるでしょう
大きな樹の幹の中に隠れている人に
こんにちは
彼は 若い樹と老いた樹とでは
どのように思考のパターンが違うかについて
終始驚いた声で教えてくれるでしょう
現在と未来との隙間に隠れている人に
こんにちは
彼は 半分の友人が未来に行ってしまい
半分の友人が現在に残っているため
孤独なのです
現在と未来が接続される秘密について
終始喜んだ声で教えてくれるでしょう



自由詩 駆け込まれる Copyright 葉leaf 2008-08-28 13:17:21
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