ろうそくのための
たりぽん(大理 奔)

鏡で色を盗むと
空は気圏のように薄らいでいく
ひかりだけで染められたセロファン
退色した虹がいろどる夜
沈黙ではない静かな
月光の耳鳴り

声は聞こえるものだろうか
それとも伝えるものだろうか

  文字は伝えるものだろうか
  それとも刻むものだろうか

手を伸ばしても
届かない
微笑みが封印する
かすかな篝火
灯りの結界
目の前で揺れていても
手の届かない
ろうそくのための夜
鏡では盗めないもの
こえはとどいただろうか

刻むようにささやくと
ほのおはかすかに揺らめき
篝火を盗んだ瞳が
濡れた月光のように





自由詩 ろうそくのための Copyright たりぽん(大理 奔) 2008-08-24 23:33:00
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