テレポート
黒川排除 (oldsoup)

はねられるときは
不意にやってくるから
はねられるときは
自由でありたいものだ
まずお気に入りの
ポシェットを身につけて
交差点を
まったくの無防備に
横切っていると
真横から
真横からでなくてはならぬ
積載量ぎりぎりの
4tトラックがやってくる
遮音性に優れた
ヘッドフォンで音楽を
聞いていたわたしは
轟音に気付きもせず
直立のまま
はねとばされる
体制を保ちながら
西へ
わたしを誰も
人とは思わない
トラックは積み荷を
やはり西へ運ぶ
皆が言うように
時間が止まっては見えない
景色は全部
矢のように過ぎ去り
つらなる
絵の具のような
残像を残す
わたしはまったく
直立のままで
モンゴルの市場に
肩から落ちる
負傷はなく
ポシェットの中の
遺書は無くなっている
わたしの転がる
祝日の市場は
わたしの話でもちきり
外れたヘッドフォンから
漏れる悲しい音楽で
歌う人達が
おひねりをもらう
ひねりどころか
わたしの身体は
通りゆく馬車の
ひづめに運ばれて
ねじれているのだ
その荷物は
運ばれた先の
ほどかれる場所で
わたしをきっと
忘れているだろう
わたしは中国と
ロシアの国境で
風に吹かれて
スピーカーも無しに
悲しい音楽を
骨を通して
口ずさむのだろう


自由詩 テレポート Copyright 黒川排除 (oldsoup) 2004-07-24 02:20:01
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