日曜日
縞田みやぎ

 


きちんとした襟の
背の低い男が
背を丸くして立っている
教会の門の前
指先の
薄茶けたしみと
視界のかしいだ

米が落ちている
祝福の
後先に

三本目のつえが
石畳のみぞを
せわしなくなぞり
男は
年寄りたちを
待っている
戦争の話を聞くために

陽はぼんやりと高く
もうじき
あの飛行機の爆音が
耳元を過ぎるのだ
この時代にも

帽子をはすにした
女は
家で猫を飼っている
すれちがいざまに
し しい と
浅く息を吐いた

この時代にも
祝福を

男がつぶやく

あの飛行機の爆音が

年寄りたちが
目を閉じている間に
男は
もうなんべんも
全ての川岸に
やわらかなおしまいがふることを
なぞり続けた

陽はぼんやりと高く
花嫁は絹のすそを
たくしあげて礼をする

女の家で
うろんにふりかえる


年寄り

かきあわせた襟元
礼拝堂には
朝から線香のにおいがしていた

さいわいなるかな
さいわいなるかな

もうなんべんも
おしまいがふった日曜日に
すべてはうつむいて
あさく
目をとじていた


 


自由詩 日曜日 Copyright 縞田みやぎ 2008-08-23 00:00:40
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