赤語
佐々木妖精

まあ 夢の話だ
乗り過ごした成人式を
だいぶ前にすませたやつが
不意に眠り込んでしまって
夢を見て
目が覚めても
こわさからは覚めきれなくて
夕方だったはずが
真っ暗なんだ
消し忘れたエアコンの息遣いを
止めてくれる人もなく
潜り込める布団もなく
そういう場所はもう
誰かとうまくやって
築くしかないってのを分かってて
言ってるんだ
ぶった切ってぶった切られてきたけれど
誰でもいい気分だ
誰でもいいからそばにいてくれってのと
誰でもよかったと供述してるやつは
他人なのかな
撫でつけてくれる手なんてのもなく
撫でてみれば
顎先に不精ひげ
この伸び具合ならまだ
なんて時計代わりにしてたら
聞いてみたくなってさ
人の子の親ってのに
かつて子供だったきみ
未曾有のきみに
頭を撫でるってのは
撫でられるのと比べてどんな感じだ
このテンションで夜更けに
メールや電話できねえし
するためのネタも
取り繕う余裕もなく
ただどんな感じかと思って
なんかもう
涙より先に言葉が溢れるようになっちゃって
ぬぐいきれないんだ


自由詩 赤語 Copyright 佐々木妖精 2008-08-22 00:26:04
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