太陽の光はまだ早すぎる
皆月 零胤

僕たちは気づかないうちに
夜の闇に飲み込まれていて
人混みに流されていた

ほんの些細なすれ違いから
互いに伸ばした指先も
届くこともなく
雑踏の中に互いの姿を見失う

 あとほんの少しでわかり合えたのかもしれない
 あとほんの少しで互いに変わることができたのかもしれない

無駄に飾られた空っぽの星屑みたいな街で
こころはどこにも繋ぎ止められることはなく
虚ろな闇を抱えたままやっと口にした
小さな声はたくさんの音にかき消されて
最後の言葉さえ聴きとることもできなかった

朝がやって来て太陽の光が射しても
本当の純粋さなんかとっくの昔に無くしてしまったから
目を開けられないままに闇の中を彷徨い続けた
暗闇はこころを照らし出さずに隠してくれる

前を行く人たちの中にあなたの後ろ姿を探してしまうけれど
本当に探しているのは自分自身の後ろ姿なのかもしれない
子供の頃の無邪気な笑顔がどんなものだったかを
虚ろな闇の中で必死になって思い出そうとした

強い光はよけいに希望を奪ってしまうんだね
今はただ前を歩いてゆけるぐらいの小さな光を
大切にしていないと前にすら進めなくなってしまうから

太陽の光はまだ早すぎる


自由詩 太陽の光はまだ早すぎる Copyright 皆月 零胤 2008-08-12 16:24:22
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