太陽の光はまだ早すぎる
皆月 零胤
僕たちは気づかないうちに
夜の闇に飲み込まれていて
人混みに流されていた
ほんの些細なすれ違いから
互いに伸ばした指先も
届くこともなく
雑踏の中に互いの姿を見失う
あとほんの少しでわかり合えたのかもしれない
あとほんの少しで互いに変わることができたのかもしれない
無駄に飾られた空っぽの星屑みたいな街で
こころはどこにも繋ぎ止められることはなく
虚ろな闇を抱えたままやっと口にした
小さな声はたくさんの音にかき消されて
最後の言葉さえ聴きとることもできなかった
朝がやって来て太陽の光が射しても
本当の純粋さなんかとっくの昔に無くしてしまったから
目を開けられないままに闇の中を彷徨い続けた
暗闇はこころを照らし出さずに隠してくれる
前を行く人たちの中にあなたの後ろ姿を探してしまうけれど
本当に探しているのは自分自身の後ろ姿なのかもしれない
子供の頃の無邪気な笑顔がどんなものだったかを
虚ろな闇の中で必死になって思い出そうとした
強い光はよけいに希望を奪ってしまうんだね
今はただ前を歩いてゆけるぐらいの小さな光を
大切にしていないと前にすら進めなくなってしまうから
太陽の光はまだ早すぎる