浜木綿
Etuji

やがて
海へ漕ぎ出すのだ

背後の松林を
寂寥が吹き抜ける

空疎な日をうめるように
浜木綿が群れて咲く
その眺めだけは
今が
夏だということを
信じてもいいのだ

日が落ちてゆく
誰かの名を呼ぶように
赤く落ちてゆく

凪の海から
魂を小船にのせて
はてしない水平線のかなたまで
誰もいない海へ
しずかに漕ぎ出すのだ

浜木綿よ
それでも私は不幸せではないのだ。










自由詩 浜木綿 Copyright Etuji 2008-08-11 20:40:02
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