涙の湖
蜜柑


私は今日も朝から晩まで

1人
ボートを漕ぎ続けている

この広い広い湖の果てを目指して

昔はここにも美しい花や
可愛い小鳥達が仲良く暮らしていたんだよ

王国の住人は私一人

ある日、どこからか異邦人がやってきた

最初は毛嫌いしていたが、時が過ぎると共に、いつからか二人の王国になった

何をするのも一緒だった

君と過ごし始めて3年が経とうとした時

私達の王国に大きな嵐がやってきた

雷は木々を破壊し、風は全てのものを吹き飛ばし
雨は三日三晩降り続けて王国全てを流していった

嵐が去った後、そこには湖が静かに広がっていた

私達に残された物は
古びた一隻のボートだけ

最初はね、2人で漕いでいたんだよ

新しい私達の王国を探しに

だけど

途中で君はいなくなってしまった

もうボートは漕ぎたくないって

自由になりたいって

そう言って君は
背中に生えた翼で空高く
私一人を置いて

飛んでいってしまった


私は空を飛ぶ事が出来ない
私の翼はもう随分と前から折れて、ちぎれてしまっている


そんな醜い私を君は綺麗だと

言ってくれたのに

守ってくれると約束したのに


私は今日も1人
ボートを漕ぐ

湖の果てを目指して


君はこの湖の名前を
知っているかい?

『涙の湖』
っていぅんだよ

私はいつか
このボートを降りる事が
出来るのだろうか


涙は枯れるのだろうか


私は今日も1人
ボートを漕ぐ

湖の果てを目指して



自由詩 涙の湖 Copyright 蜜柑 2008-08-04 18:02:04
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