アンビバレンスシティ
紫音

テレビのスイッチを入れる
あまり偉そうにも見えない小役人な校長が
あまり反省もなく頭を下げる

気付きませんでした


とりあえずの場の空気をつくり
権力という名のワイドショーは
いじめの報告はゼロでした

こちらは偉そうに怒ったフリをする


見慣れた茶番

予定調和の偽り


本質はいつも遠景に
迷惑そうに追いやられ
しかめ面で消えていく


心地よくすらなく
吹き飛んだ原発のように
溶け出して
混ざり合う
偽りの多重奏


いつだって

いつだって


徒競走は同時にゴールをし
皆が一等賞で

日本には軍隊がなく

会社には不正がなく

学校にはいじめがない



人は皆平等です

そんな偽りも続けていれば

いつしか偽りの真実になっていく



全員が白雪姫の舞台
それのどこが平等なのか

そうやって作られた平等と
個性を活かせという矯正が

アンビバレンスに心を裂いていく
裂きイカのように


そんなに平等が良いなら

財産を全て没収し
能力や外見の差さえ意味を無くしてしまえば

望みが適うはず



そう



強制収容所のように




哀しいかな
そこですら
看守との
共生で平等でさえなく


それが
いかに惨めで醜悪であろうと

人は

極限で
本質を体現するのだと


いつしか
そんなことすら忘れ

忘れたフリをして


偽りの中に
うわべすらない
得体の知れないものを生み出していく



みんな平等で
個性もなく
外見も同じで
複製品のように鋳型に納まり
劣等感を誤魔化し
才能を否定し



テレビを消す

偽りの拡声器を



自分の醜さは
いかにしても消すことができず

未熟であることを認めるが故に
未熟であることに気付くことを
誰かが覆い隠した


見慣れた番茶が

混沌と澄まされていく




そして今日も



明日も



見て見ぬフリを


知らぬフリを



気付かぬ



フリ










自由詩 アンビバレンスシティ Copyright 紫音 2008-08-02 01:46:28
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