快適
nonya


ガラス張りの冷蔵庫から
ぼんやり眺める街並みは
いつか見た夢のように
とても希薄で

行き過ぎる人影は
照りつける陽射しに
丁寧に舐め回された揚句
溶けかけている

薄いアイスコーヒーと
引き換えに買ってしまった
心地良い亜寒帯の風

汗は速やかに
エクリン腺の洞窟深く
ひいていくのだけれど

快適な環境は
僕達の賞味期限を
延ばしてくれるのだろうか

乾燥した会話は
僕達の汗と涙を
浄化してくれるのだろうか

清潔なBGMは
僕達の苛立ちを
少しは丸めてくれるのだろうか

いつから僕達は
味も匂いもしない
清浄野菜になったのだろうか

エアコンの風に伝票がそよぐ

干からびた疑問を
テーブルの上に並べたまま
僕はまだ
席を立てないでいる


自由詩 快適 Copyright nonya 2008-08-01 20:40:12
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