あの空の話
霜天

あの空の話





もう遠くなった映像の中では
坂道の向こうの太陽と
薄くなるグレーの空とが
混在していて
蝉時雨
引いては寄せて
寂しさを反芻している

知らない知らない知らない
帰り道の小さな花の苦労も
夕暮れ空の成り立ちも
まだなにも、そんな頃
得意げに摘み上げては
夕日にあげるみたいに丘の上
並べていた空は
赤 赤 赤
赤としかいえない赤の上を
飛行機雲が一本横切って
その上を渡っていった
花びら

そんな





あの空の話
屈折してこの街に届く光の
仕組みをなんとなくは理解している
あの赤よりも赤い赤を
僕はまだ見ていない
空に消えていった
花びらの行方、も

迷うたびに反芻する
名前も知らないあの花の色と
あの空の話


自由詩 あの空の話 Copyright 霜天 2004-07-20 16:40:44
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