緑星
木立 悟





見えない子供の夢ばかり見る
うたと声を指さしている

かすかな鉄の飛び去る音
鐘に落ちる音 水に落ちる音

岩を擦る木
火ははじまりを燃し

ほどきほどかれ 姿むすぶ
もうひとつの息 姿むすぶ

手を振る音 指の先
爪の先 螺旋の水

角は燃え 煙は巡り
星の曇を越え 光を巡り

見えるものは見えず まだ見えず
音だけが河口をかがやかせている

こだまが斬るもの 斬り口の蒼
遠去かり 振り返らない友の蒼

小さく 無いものに触れてゆく
隙間多く 梳きつづける指

船は去り 影は去り
汽笛は残り 波を押しやる

光の霧が 音だと知った日
水辺にひとり うしろにひとり

伝わることのない ふたつの静けさ
振り返ることなく 見つめあう

空の下 空を知らない
泣きつづけて うたいつづけて

夜の子の声 緑に 緑に
緑以外のなかにさざめく

















自由詩 緑星 Copyright 木立 悟 2008-07-28 15:24:10
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