電気蝉
さかまき

郊外の電柱林は、中小ビルと畑があって
互いに異なるプロトコルでネットワークにアクセスしている。

電波洪水が起きても、ただの雑音だから無視されて、ゴミ箱に捨てられた。


少年は耳を雑音にやられてデフになってしまった。
話すことも出来なくなった。



デフの少年は、電柱が木になるまで歩いた。

唸りながら歩いた。
電波で体がけいれんしそうだったから


紫外線を浴びて、
いっぱい汗かいて、
シャツもびっしょり

けど、少年は気持ち良かった。



木の森にやってきたら、

電波は蝉の声になっていた。

少年は、電柱林の時と同じデフのままだったけど、
もう唸るヘルツじゃなかった。



向こうからやってきた。

少女

何か言ってきた


デフの少年はなにも聞こえないから、?って思う。


ここでは、少女もデフだった。


少年と少女は、近くに寄り合って、
目を合わせて笑った。

目を合わせて笑った。




自由詩 電気蝉 Copyright さかまき 2008-07-27 15:53:41
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