妊婦のロボ子さん
小川 葉

 
こどもができたの
と、いうと
嘘をつけ、といわれ
生まれてきたのは正真正銘
ロボットの赤ちゃん
の、はずだったのに
人間の
あなたの赤ちゃんよ

それでも
ロボットの子供にふさわしく
格納庫に
しゅうようされた
ロボ子さんの
赤ちゃんは悲しいけれど
ロボ子さんはやさしかった
のかもしれない

ロボ子さんは
ロボットなので
人間に
従わなければならない

誰もが知っている
本当は
ロボ子さんは人間であることを
ロボ子さんは
どうして
ロボ子さんになったのか
誰も知らない

知らないふりをしてるだけ
僕も君も
きっと
答えられないだけ
それだけで
ロボ子さんは
ロボ子さん
なのかもしれない

ロボ子さんは
生きている
ロボットにふさわしい
格納庫にしゅうようされて
今日もどこかで
生きている

ロボットにさえなれなかった
我が子を
人として
抱きしめてあげたかった
仮想現実の
記憶の彼方で
 


自由詩 妊婦のロボ子さん Copyright 小川 葉 2008-07-26 21:26:25
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