苦い夏の日
銀猫


真っ白い日向を
ひとひらの
アオスジアゲハが舞う
それは飛ぶ、というより
風に弄ばれ抗うようで
わたしの傍らを掠めたとき
小さく悲鳴が聞こえた

真夏を彩るカンナの朱や
豆の葉の濃いみどりに
交わることも無く
淡く、みずいろを放ち
やがてだれも知らぬ場所で
眠るのだろう


  蝶の眠る、ところ
  柔らかな草と
  光る露に満ちた、
  永遠の朝の静か

  わたしの目覚める、ところ
  汗ばんだ額で
  夢と現の境界線に迷い
  喧騒の前触れに慄く
  細波の立つシーツの上


夏を生き
苦い水を飲み干して
繰り返すいのちの日々

悲鳴は誰に届くこともなく
いつか風になる




自由詩 苦い夏の日 Copyright 銀猫 2008-07-25 10:16:45
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