家族
山中 烏流
例えば。
茹だるような青が
私たちを押し潰した夏に
もしも、一握りの白があったとして
それは
冬たる物になるだろうか?
アスファルトに溶けたのは
陰、ばかりではなく
その幼さから溢れ出した
言葉も、ではなかったか
それこそ
最初から無かったみたいに
振る舞っていて
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かあさまは
わたしのしらないおかおで
しらないおじさんと
おててつないで
どっかいっちゃった
とうさまは
ねえさまをいっぱいなぐって
それから
わたしをいっぱいなでたよ
おむねとおしりと
あと
わからないところを
ねえさまは
よこでうごかない
にいさまは
とおくをみたままで
わたしのこえに
こたえてくれないの
ねえ
わたしはどうすればいいの?
どうすれば
みんなでしあわせになれた?
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(中指と薬指
(その間の水掻き
おんなは
幾つであろうとも女だった
包み込んだ壁の
湿った感触に対する、鳴咽
(手首から肘
(静脈に沿って流れた赤
これが、命だった
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「必要と、し」
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小さな子が
私を指差している
誰かと問われたが
私もまた
その子を知らないので
無視してしまった
ふ、と気付けば
眼鏡をかけた顔が
私の指先を舐め回しながら
こちらを覗いている
小さな子は
私を見つめたまま
もう、何も言わない
ああ
これは、誰?
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わたし、
とは?