家族
山中 烏流



 
 
例えば。
 
 
茹だるような青が
私たちを押し潰した夏に
もしも、一握りの白があったとして
 
それは
冬たる物になるだろうか?
 
 
アスファルトに溶けたのは
陰、ばかりではなく
その幼さから溢れ出した
言葉も、ではなかったか
 
それこそ
最初から無かったみたいに
振る舞っていて
 
 
******
 
 
かあさまは
わたしのしらないおかおで
しらないおじさんと
おててつないで
どっかいっちゃった
 
とうさまは
ねえさまをいっぱいなぐって
それから
わたしをいっぱいなでたよ
おむねとおしりと
あと
わからないところを
 
 
ねえさまは
よこでうごかない
 
にいさまは
とおくをみたままで
わたしのこえに
こたえてくれないの
 
 
 
ねえ
わたしはどうすればいいの?
どうすれば
みんなでしあわせになれた?
 
 
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(中指と薬指
(その間の水掻き
 
 
おんなは
幾つであろうとも女だった
 
包み込んだ壁の
湿った感触に対する、鳴咽
 
 
(手首から肘
(静脈に沿って流れた赤
 
 
これが、命だった
 
 
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「必要と、し」
 
 
 
 
 
 
 
******
 
 
小さな子が
私を指差している
 
誰かと問われたが
私もまた
その子を知らないので
無視してしまった
 
 
ふ、と気付けば
眼鏡をかけた顔が
私の指先を舐め回しながら
こちらを覗いている
 
小さな子は
私を見つめたまま
もう、何も言わない
 
 
 
ああ
 
これは、誰?
 
 
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わたし、
 
とは?
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


自由詩 家族 Copyright 山中 烏流 2008-07-18 12:48:31
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