ジョギング
マッドビースト


 ねぇスニーカー
 ぼくはどこにいけばいいんだろう?
 
 運動不足という言葉に現実味はない
 なにかが足りないんじゃなくて
 消費されずにあまりまくっていることが
 耐えられないんじゃないか

 走るためのエアクッションまで備えた君を靴棚に幽閉して
 たまに引っ張り出してはこんなことを聴く
 僕は失礼だけど
 いまこの部屋にはいたくないんだよ

 準備運動もそこそこで
 走り出せば息は切れるし
 体はきしむ
 膝が痛くなってさ
 私のこと都合のいいときだけ思い出すのね
 ってそっぽ向いている

 そんな膝をなだめて
 さすって
 また走ってもらうんだ
 
 ねぇぼくたち
 どこに行こうか?


 土曜日の18時だっていうのに
 それでも東八道路には
 トラックがいっぱい走りつづけてるんだ
 コンテナになにを詰め込んでるの
 その秘密の木箱の中を見せておくれよ 参考までに
 どこにいくんだい
 その木箱の中身を待ってるひとがいるんだね
 ぼくのポケットの中は空っぽなんだよ 

 ねぇトラックドライバー
 ぼくはどこにいけばいいんだろう?
  
 歩道を反対側から
 汗だくのおじちゃんが走ってきてるんだ
 白いシャツがじゅわじゅわにくっついて
 メガネのむこうでむき出しになった眼球は血走っててさ
 はぁはぁいいながら
 「どこにいけばいいんだろう」って
 すれ違うとき聴こえたよ
  
 おじちゃん
 ぼくもなんだよ


 空は
 透明なオレンジと
 灰色と
 ブルー
 あざやかじゃないけど
 すごく素敵なんだ

 いつのまにかバランスをとった
 呼気と吸気
 呼吸するってことは
 世界と混ざることだと思う

 朝は不安げに青白かった今日も
 とりあえずは一日を行き着いて
 あんなにきれいに西の空で燃焼してる
 きっとあの幾らかは世界と入れ替わったぼくの一部なんだよね

 もう夜が来るよ
 膝をさすって
 部屋に戻るコース
 少し眠れば朝だよ
 ねぇ
 明日はどこに行こうか。


自由詩 ジョギング Copyright マッドビースト 2004-07-18 23:16:13
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